ダンサーである田中泯さんの著書『ミニシミテ』(講談社)を読んでいます。拾い読みしていて、冒頭から読み込んでいるわけではありません。書物には最初からしっかり読むべきものと拾い読みして積み上げていくものがあるような気がしています。
今日のブログのタイトルは本書の見出しのひとつ。まさにこの著書自体を表現したコピーだと思います。以前からこのブログでも僕のダンス好きなことは書いてきました(参照ページ)が、舞踏についてはそんなに詳しくはありません。
田中さんは自分のダンスを「オドリ」と表現されますが、独自のダンス世界をお持ちなのは素人の僕でもわかる。社会学者のロジェ・カイヨワに「人から分類されない、名付けようのないオドリを続けていってください」と評されたといいます。
今は映画やドラマのご出演が増え、誰もが知る名俳優といえますが、「ハイパーダンス」から「身体気象」と呼ばれる舞踏(田中さんは舞踏自体を否定)での革命を次々と起こしたダンスの改革者であって、とんでもなくぶっ飛んだアーティストなのです。
俳優として有名になったのは『ハゲタカ』にドラマ初出演されてからでしょうか。大河ドラマの『龍馬伝』で吉田東洋役を演じられた時、圧倒的な存在感に驚かされました。言語に頼らないダンサーが言葉という更なる武器を手に入れた凄さを感じた。
前々回のこのブログで、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の概念に触れました(参照ページ)が、この本の中にウィトゲンシュタインの哲学そのものを感じる箇所を、まさに今日のタイトルの文章の中に見つけました。
ーー嘘つきな言葉は僕のカラダの中では逮捕される、その罪は、かっこ悪いから。僕のカラダはいつも教えてくれる、人に見えないところでこそカッコよくすごせ、と。カラダこそが永久に僕自身だ。それも、たった一個だ。面白いじゃないか、此処からしか始まらない場所、僕のすみか。ーー
田中さんは1985年から山梨へ移り住み、もう40年近く過ごされている。79歳となる田中さんの美しい肉体は農業を礎とする暮らしの中で作られたものです。本のタイトルである「ミニシミテ」は山梨の自然の中で得た大切な言葉だと言います。
物事がカラダの内にまで伝わる感覚。身に沁みるほど農作業を重ね、身に染みるほど飲んで友情を深める。そして「ミニシミル」ほどの言葉を吸い込み、吐き出す。身体を思いやらねばいけないと気付かされます。まさに身体は「僕のすみか」なのですから。
ちと真面目すぎだな。今日のブログは。笑