パリ五輪が始まりました。雨の降り続く中のオープニングセレモニーは、セーヌ川を中心に、エッフェル塔、ルーブル美術館など「花の都」パリの街を舞台にした、とても素晴らしい演出でしたね。
セレモニーのエンディングでセリーヌ・ディオンが、エッフェル塔の上からエディット・ピアフの名曲『愛の讃歌(Hymne à l'amour)』を熱唱し、シャンソンが持つ力を改めて感じるクライマックスでした。
開会式をずっと見ていて、フランス共和国のスローガン「自由、平等、博愛(Liberté, Égalité, Fraternité)」の起源であるフランス革命と、民主主義の歴史を感じざるを得ませんでした。
驚いたのはフランス革命で処刑された王妃マリー・アントワネットが自分の首を持ち、革命歌と共に現れたシーンです。建物は、かつて王妃が幽閉されたコンシェルジュリーだったとのこと。汗
1989年7月14日に僕は友人と2人でフランスを訪れていました。何も考えずにローマからパリに入ったのですが、コンコルド広場が異様に盛り上がっているので、初めて気がついたのです。
フランス革命200周年の祭典が行われていたのです。もう35年も前なんですね。まだ20代の感性豊かな時にパリを訪れていて本当に良かった。あれから行ったことはないのですけどね。笑
個人主義の深さというか、フランス人の堅牢な主体性をその時、強く感じました。周りの様子をオドオドと伺い他人に合わせる日本人とはまるで違う。フランス革命を学び直すきっかけにもなりました。
五輪の王妃の演出はSNSでは賛否両論。僕としてはフランスらしい、とても素敵な場面でしたよ。そして思い出したのが下の一文です。なんてフランスっぽいグロテスクかつエロティックな知性なんでしょう!
ーー死の影に包まれた霧の中から一挙に脱出して、群衆のように祝祭の奇跡を一瞬に押しあいへしあいしながら、軽佻に狂気じみて目ざめたかのようにして、私の手は一本の花を取ってそれを唇へ持っていくーー(G .バタイユ 『無神学大全 内的体験』(現代思潮社)より
資本主義による格差の拡大、自国第一主義による分断、それに重なるかのように戦争と自然災害と病いが世界に蔓延しています。そんな中でのオリンピックは、まさに平和を象徴する祭典です。
民主主義の捉え方も様々でしょう。でもフランス革命や米独立戦争で多くの血が流れたからこそ、今の民主主義が在るという歴史を忘れてはならないと強く思いました。「権利には義務が伴う」と。
民主主義を守るために、ただ自由を求めるのではなく自由を守る自分の責任を果たしたいものです。今の自由を獲得するためにどれだけの血が流されたか。どれだけの屍の上に自由が在るのか。
何となく、そんなことをパリ五輪の開会式を見ていて感じました。僕の妄想が1人でも多くの人に届くことを祈ります。頭がおかしくなったわけではありません。バタイユ好きのせいか元々少し壊れているのでね。笑