久々に広島市現代美術館に行ってきました。21日から始まった特別展は「ティンティン・ウリア:共通するものごと」。日本初となる個展で、様々な領域にわたるインスタレーションや映像作品はとても刺激的でした。
ティンティン・ウリア(Tintin Wulia)は、1972年インドネシア生まれの女性アーティスト。民族的なマイノリティである中国系バリ人で、オーストラリア、イギリス、スウェーデンに在住。
幼少期から差別を受けてきた経験をもつウリアは、人間が作り出した境界と、その境界を維持するために人々が繰り広げる戦争や、市民権、さらに国家機密を作品のモチーフにしています。
特に1965〜66年に起こったインドネシア大虐殺のときに行方不明となった祖父の存在が大きな背景となっています。このジェノサイドはいまだに詳細が不明なところもある惨劇です。
政治的背景は置いておいて、ウリアの作品は、これらのテーマから発する人々をつなぐ「共通するものごと」を鋭利に表現します。展示室の最初に現れるのは、天井に吊るされた多くの複製パスポート。作品名『一体感の集まり(回想)』。
地球上のあらゆる国のパスポートは、所有さえできれば、国際移動を可能にすると同時に、自らが選ぶことのできない国家への帰属を象徴します。親ガチャではなく、まさに「国ガチャ」。
ロシア・ウクライナ戦争が始まってすでに2年半。イスラエルによるガザの攻撃からほぼ1年。レバノンからシリアまで戦火が広がろうとしています。ウクライナに関するニュースは露出が減ってきている。
ウリアの作品群を見て、この状況に慣れてはいけないことを思い起こしました。世界中でこれまで戦争が無くなったことは一度もない。いつも地球のどこかで愛らしい子供たちが無残に亡くなっているんです。
日本にいるから戦争には関わらないだろう、「国ガチャ」で我々は恵まれたから関係ない、それでいいのでしょうか? 自民党では昨日、石破新総裁が誕生しました。防衛大臣経験者です。
鉄オタでラーメン好き。庶民的なところのある素敵な方だと思います。人間的な魅力がある。ただ「アジア版NATO」の創設を見据えておられる。これは国際紛争に巻き込まれる火種となる可能性もある政策です。
日本はもはや「国ガチャ」で当たって良かったと思える国では決して無い。経済的にも福祉的にも防衛面でも、危険と隣り合わせです。石破新総裁に期待する反面、しっかりその政策を見定めないといけません。