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サステナブルとアート 〜178回〜

長坂真護オフィシャルサイトより 真実の湖『Can you hear me?』(117×117㎝)
長坂真護オフィシャルサイトより 真実の湖『Can you hear me?』(117×117㎝)

芸術の秋です。土曜日のブログは広島市現代美術館に行った感想でしたが、今日は「サステナブル・キャピタリズム」の考えの元、芸術活動を続ける美術家、長坂真護氏について書きたいと思います。

 

長坂氏は、世界最大の電子機器廃棄物処理場(墓場)であるガーナのアグボグブロシーを拠点とし、電子ゴミを使用した芸術作品を制作しています。なぜ、アグボグブロシーに世界中からゴミが集まるのでしょう?

 

先進国で廃棄処理の代替手段として寄付の名目で発展途上国に電子機器が輸出され、アグボグブロシーにおいて廃棄物を焼却し金属や銅線を取り出し売るという世界最大の焼却場ビジネスが成立しています。

 

アグボグブロシーのスラム街には3万人が住んでいるが、老人は一人もいない。焼却場の労働者(12時間労働で500円の収入)は、常に有毒ガスを吸っているため、がんなどの病気にかかりやすく、長生きができないのです。

 

かつてスマホやiPadをニューヨークや台湾などで安く仕入れ、日本で高く売って生計を立てていた長坂氏は、自分のビジネスが、アグボグブロシーの人々の命を縮めていた現実を目の当たりにした時、死にたいと思ったと言います。

 

長坂氏は廃棄物を使った作品の売上のほとんどを使って(彼の利益は5%だけ)、現地に多数のガスマスクを配布したり、スラム街初の学校を設立したり、電子廃棄物リサイクル工場をつくる活動などを行っています。

 

――僕が秋葉原で集めた電子ゴミでアートを作っても価値はないだろう。ガーナのゴミでアートを作るから、先進国で高く売れる。これは僕が仕掛けたレバレッジだ――(『サステナブル・キャピタリズム』長坂真護著)

 

このレバレッジこそが、長坂氏の概念「サステナブル・キャピタリズム」です。①文化:廃棄物でアートを作ってガーナの現状を発信、②環境:作品をつくりゴミを減らし、③経済:絵を売ったお金でリサイクル工場をつくり雇用を増やす。

 

彼の言う通り、資本主義の先を見るサステナブルだと思います。――そこで見た光景は、まさに資本主義がつくりだした深い闇だった。僕たち先進国の人間が輝けていた理由は、彼らを踏み台にしていたことが一瞬で分かった。――

 

長坂氏は、次に現地の人が誇れる産業をつくろうと、ガーナ発のEVバイクメーカーの設立を目論んでいます。なんて素敵な夢なのでしょう。自分のことばかりに気を揉んでいる場合じゃないですよね? あ、僕のことですよ。笑