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永平寺の修行体験その1 〜190回〜

永平寺 龍門
永平寺 龍門

今週日曜日から、会社の仲間と一緒に、福井県にある曹洞宗大本山「永平寺」で一泊二日の参禅研修を受けてきました。仏教には昔から興味があって、開祖である道元禅師の著書を含め、いろんな本を読んできましたが、本格的に坐禅を組むのは人生で初めての体験でした。

 

初日のスケジュールは、15時に寺に集合、最初の坐禅体験は15:30から。16:20に入浴、17:30に夕食。まるで病院のように早いぜ。夕方18:30から坐禅講話を聞きます。19:20から修行僧の生活を描いたビデオを視聴し、再度座禅を組みます。21時には消灯し、就寝。

 

二日目は、朝4:00に座禅に入るため、その前に起床し、洗面を済ませなければなりません。5:00からは僧侶たちによる朝課(いわゆる朝のおつとめ)に参加させていただきます。いわゆる読経ですね。そのまま軽く講内を見学後、朝食をいただくと最後の座禅があります。

 

その後、参禅を通しての感想文を書き、それをもとに初日講話で会話した僧侶と茶話会形式で質疑応答を行い、9:00には下山します。曹洞宗は規則が厳しいことで有名ですが、日々の行い全てが修行であり、朝課での僧侶の動きも整然としていて、とても美しいものでした。

 

食事を作ること、食すことは特に大切な修行となっています。食事(もちろん黙食)も約束事の中で厳かに行われ、食事の前には「五観(ごかん)の偈(げ)」を唱えます。内容は、他の命をいただくことへの感謝や自省、それらを取り巻く実相の観察など意義深いものです。

 

作法として必ず両手で器を取ります。そして左手に器を持ち変え、右手で箸を使って食べ物を口に運び、音を立てずに食す。その器を両手で膳に置いてから、次の器を両手で取り、同様に箸でいただく。一つ一つの食べ物の作られた御縁を考えながら丁寧に食べるのです。

 

普段の生活で、そこまで料理に想いをめぐらせつつ食すことは多分ないと思います。スーパーやコンビニに行けば、好きなものがほぼ出来上がった形で販売されていて、調理する必要もなくレンジでチンすればすぐに食べることができる。何なら持ち帰って即いただける。

 

お店に行けば、どこから仕入れられたか分からない食材を、店主が絶妙に手を加えて(炒めているだけかもしれぬがw)、美味しい料理を提供してくれる。命が失われ、多くの人の手を介して加工され、運ばれ、料理となって出現するまでの過程はすっかり忘れている訳です。

 

道元が著した『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』は、これらの食事作法を細かく定めた教則本です。ここには修行僧が、食事を取るときに用いる「応量器(個人の食器)」や、箸の作法、そして「五観の偈」、食事中の禁止事項等が丁寧に記されています。

 

座禅体験の感想を記す前に、道元禅師の料理への並々ならぬ想いを紹介してみました。それまで食事をおろそかにしていた道元が、修行で訪れた中国(宋)で食事を準備する老僧(典座:てんぞ)に出会い、食事作りが禅の大切な修行であると気づかされたという話は有名です。

 

バス停前「一休」の名物:幻のアップルパイ
バス停前「一休」の名物:幻のアップルパイ

さて参禅研修を終えた僕は、永平寺から福井駅に向かうバスの待ち時間に、甘味処でアップルパイとコーヒーを「いただきます」も言うことなく、バクバクと喰ってしまったことを深く反省しています泣。次回は、本題の座禅についてこのブログに書きたいと思っています。