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ウクライナと壊れたテレビ 〜194回〜

ロシア・ウクライナ戦争が始まったのは、ちょうど3年前の2022年2月24日。3年も続く戦争になるとは当初誰も予想しなかったでしょう。アメリカが介入し、事態はさらにややこしい状況にあります。泣

 

トランプ氏によるゼレンスキー大統領に対する暴言が多く報道されていますが、ゼレンスキーさんが「独裁者」呼ばわりされるようなことをしたとは、僕たちを含む多くの西側の人間は思っていない。プーチンこそが独裁者だろうと…。

 

トランプさんが異常なのでしょうか? いえいえ、今はまさに彼が最初に大統領に選出された時に表現された「ポスト・トゥルース」な状況にあり、世論形成は客観的事実より個人の信念に合うものであれば、虚偽でも選ばれる訳です。

 

嘘でもいい、自分の主義・主張に適していて利益となるものであれば、それが真実(トゥルース)になる。まさに「ポスト真実」「脱真実」な時代なのです。でも、それは最近始まったことではありません。

 

昭和の日本の戦争期にも、多くの真実が曲げられて世論が形成されました。それは為政者や権力者だけが主体となったわけではない。かつてこのブログでも、社会学者の見田宗介さんの下記の文章を引用したことがあります。

 

――「みんなの意見」に逆らわないように、「時代の流れ」にのりおくれないように動いていく結果、ひしめいて海に落ちてゆくペンギンの集団のように、戦争に突入していったのでした――『社会学入門ー人間と社会の未来』

 

テレビでも多くのコメンテーターが、持論を展開しています。フジテレビの中居くんに始まる騒動以降、あるいはもっと前の斉藤兵庫県知事の一連の選挙問題もきっかけに、マスメディアさえ真実だと信用に値する報道を行う機関とは言えなくなっています。

 

フジテレビの「めざまし8」のメインキャスターである谷原章介さんが、今回のフジテレビの不祥事について、番組内で深々と頭を下げて謝罪していましたよね。社員でもない谷原さんがなぜ頭を下げているのか? おかしくない? そう思った方も多いでしょう。

 

テレビや新聞を見ることで意見の偏りを無くすようにしましょう――そうマスメディアが主張したところで、今となっては信用できないわけです。テレビの中のコメンテーターさえ、誰かに(何かに)言わされているんじゃないかとの疑念を持ってしまう。

 

フェイク動画がウェブサイトに溢れています。まさにAIの進化によるものです。簡単に権力者の発言を加工して拡散することができる時代に、どのメディアがそのエビデンスについて自社の責任を掛けて保証できるのか?

 

テクノロジーの進化により、①SNSでの個人発信を可能にし国民全員がメディアとなって、②AIが簡単にフェイク情報を加工し容易に世の中に広げることができる。サイバー空間でフィルターバブルの中にいる僕たちは、誰を(何を)頼りに真実を得ることができるのでしょう?

 

虚偽情報のフィルターバブルに閉じ込められた多くのペンギンたちは、ひしめいて海に落ちてゆくしかないのでしょうか?  僕は今、信用に値する人間たちによる、威厳に満ちた新たなメディア装置の出現を心から期待しています。