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肺の病い

大学2年生のとき緊急入院したことがあります。 瀬戸内式気候で空気のとても良いところだったので、胸の病気なんかになるのが不思議なんですが、ある日突然、肺がパンクしたんです。

「自然気胸」という病名で、私のような痩せ型の優男? に多い病気だと聞き、なんか悪い気がしませんでした。 医者からは2週間くらいベッドの上でただ大人しくしていれば肺に開いた穴が自然に塞がって治るからと言われ、さらに悪い気がしません。

入院して最初の頃はのんびりしていたのです。ところが寝ても覚めても、否、寝ても寝ても穴は塞がらない。3週間くらいが経ったころに医者に手術をしましょうと言われて、とても悲しかった。まるで胸にポッカリ穴があいたように。あいてたけど。
 
とても簡単ですぐ終わるし術後もしんどくないからと看護師に慰められて、しぶしぶ開胸手術を受けました。手術当日は終日ほぼ麻酔で意識が朦朧としていましたが、翌朝から体が異様にしんどい。初めて受けた全身麻酔の手術なので、こんなものかと思っていたのですが、手足さえほとんど動かせない感じなのです。

 

あまりのしんどさに寝たまま母親に朝食のヨーグルトをスプーンで食べさせてもらっていると、見回りの看護師にめちゃ怒られました。ーー座って自分で食べなさい。ベッドサイドに腰かけて。甘やかしすぎーー

反論する元気もなく、起き上がろうとしても、気持ち悪くてどうしてもダメ。無理やり看護師に引っぱり起こされると内臓がひっくり返ったような違和感。痛みが背中から覆いかぶさる感じがします。

やがてやって来た看護師長からは厳重注意。ーー大げさすぎ。日ごろから甘やかしてるからこんなになる。育て方の問題。マザコンーー

ひどすぎませんか? そこまで言わなくてもねぇ。命にかかわる病気じゃないのは分かるけど。

 

その時、朝一で撮ったレントゲン写真を持った主治医が飛び込んできました。出血がひどくて背中に血液が大量にたまっている。固まる前に手術しないといけない。すぐに! 青ざめたのは私でも母でもなく、その場にいた看護師達でした。2度目に手術台に上がったときは本当に悲しかった。恨みましたよ、医者も、看護師も。

 

今、新型コロナ禍で、多くの医療従事者が大変な状況にいます。命を懸けて働いている彼等には本当に頭が下がります。ただ、診断や診療を待つ患者にも大きな不満が噴出しつつあるのも確か。このウィルスは軽症と思われていても急激に悪化するという特徴があるといいます。

 

弱っている患者の心の叫びは、健康な時と違って届かないことがあります。経験上たいしたことないと思っていても、実は想定外のことが起こっている可能性がある。さらにこれは世界で体験したことのない事態です。あらゆる局面で細心の注意を払い、誤診や医療ミスが起こらないよう十分な配慮をしていただきたいものです。

 

 早くいつも通りの世の中に戻ることを願っています。今日はいい天気だからホントは外で遊びたいなぁ。