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ジャズあるいはモノの良し悪し

 

1990年前後だったでしょうか、毎年、大阪で真夏のジャズフェスに行っていました。会場は、万博記念公園お祭り広場。『ライブ・アンダー・ザ・スカイ』というタイトルでした。あの広い公園が、ジャズファンで埋め尽くされるのです。

 

マイルス・デイビス、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、パット・メセニー、デイヴィッド・サンボーン、マーカス・ミラー、エディ・ゴメス、ジャック・ディジョネット…今、思い浮かべただけでも、スゴイ面子でしたねー。もうありえないわ。

 

毎年恒例のように行ってましたが、確か1992年で終わったはずです。当時はずっと日本たばこ、いわゆるJTが冠協賛社でしたが、ジャズフェスでは収支が合わなくなったのかなぁ。その後もロックフェスは、ずっと盛り上がってましたけど。

  

確かにタバコとジャズは合いますよね。それとウィスキーも。客層も、なかなかイケてるおじさんとおねえさんが多かったです。そんな大人にあこがれる私のような若輩者(まだ20代でしたw)も背伸びしてやって来る感じでしょうか。

 

友達の少ない私も、当然、何人か集って一緒に行くのですが、その年のグループ構成で盛り上がり方も変わる。良い演奏の時にやたら騒いでいたヤツや、演奏も聴かずただ飲み食いしていたヤツは、翌年は脱落する訳です。――あいつは、もう呼ばん!――

 

でも新しい参加メンバーは結構ジャズに疎かったりして、V.S.O.P.クインテットのライブ中、ロン・カーターのアドリブで寝てたりする。トニー・ウィリアムスのドラムで「うるさい!」と目を覚ます。確かにこう書いていて、ジャズに興味のない人には何のことか分からんですよね。ま、それだけスゴイ人の演奏も知らない人には響かんということです。

  

聴覚障害がありながら『交響曲第1番《HIROSHIMA》』を作曲した佐村河内守という人がいました。ある年末、本人も来場するというので広島厚生年金会館に演奏を聴きに行ったのです。私はクラシック音楽も好きなのですが、途中からメチャ眠っていました。その日は自分の感性が鈍ったのかと落ち込んでいたのです。ところが年が明けて早々に、あのゴーストライター事件が起こった。

  

それまで彼のことを絶賛していた人々は、瞬時に口を閉ざしました。誰もそのことに触れられなくなってしまったのです。芸術の価値とはいったい何なのでしょう。商売として成立することがモノの価値なんですかね、この資本主義では? こんな難しいことを考えるのも、新型コロナのせいです。楽しくて素敵なイベントに、みんな揃ってワイワイと行きたいものです。泥酔しても騒いでも、今なら文句は言いませんよ。笑