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人のやさしさと他人ごとについて

今日は5月5日、子供の日。コロナ禍の中、ここ広島でも街中への外出は憚られる状況です。加えて外は雨が結構降っていて、子供たちが可哀そうです。

 

広島市立白島小学校に通っていました。中区に位置する市内中心地の学校です。隣接して西側に並んで市立基町高校があります。公立高校としては県内トップクラスの進学校です。

 

小学2年生の時、校庭の広島城(南)側にあるジャングルジムで、放課後の夕方一人で遊んでいたのです。なぜ一人だったのかは覚えていません。帰りそびれたのかもしれない。

 

南側のフェンスは緑色の金網でできていました。ジャングルジムに登りながら、男子高校生達が金網の向こうをワイワイ騒ぎながら歩いていく姿に気を取られました。

 

その時、足を滑らせて地面に落下してしまったのです。落ちたときの姿勢で横たわったまま、息ができずにいました。顔は南側のフェンスの方を向いています。

 

4人の高校生たちが会話します。「大丈夫かあいつ、落ちたで」「上から落ちたんか?」「結構、高い所から」「動けんのかな」私は、まだ息ができずに呆然と4人を見つめていました。

 

「死ぬんじゃないんか」「大丈夫かのう?」「別に関係ないし」「あははは」「ほんまに大丈夫かのう?」「俺らには関係ないじゃろ」「あははは」

 

僕のことを本当に心配している一人と、心配そうだけど何も言わない一人。そして自分には関係ないという一人と、死ぬんじゃないかと笑っている一人。

 

幼心に、人間とはここまで違うのかと感じた瞬間でした。しばらく横になっていると、呼吸は普通に戻り、何ともなくなりました。怪我一つしていません。高校生たちは行ってしまいました。

 

一人で歩いて家に帰っている途中、陸橋の上で冷汗がでてきたのです。急に体調が悪くなったわけではありません。人間の残酷さを感じて怖くなったのでもない。それは『他人』という存在そのものに対しての恐怖でした。

 

小学校の中で起こった些細な出来事。フェンスを隔てたこちら側と向こう側では、別の出来事だったのかもしれない。それを受け止めるのは、とても恐ろしいことだったのです。

 

ロックバンド「THE YELLOW MONKEY」、通称イエモンの1996年のヒット曲に「JAM」があります。

 

♪外国で飛行機が落ちました ニュースキャスターは嬉しそうに

 「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」

 僕は何を思えばいいんだろう 僕は何て言えばいいんだろう

 こんな夜は逢いたくて逢いたくて逢いたくて 君に逢いたくて 君に逢いたくて 

 また明日を待ってる

 

第4波となった新型コロナ感染は、日本ではますます拡大を続けています。緊急事態宣言を解除できる状態に来週はなるのでしょうか? 一方でワクチンが普及し、終息を迎えようとしている国もある。

 

コロナ禍でのフェンスの中と外。皆さんのフェンスは何処にありますか? どこからが『他人』でしょう。国境ですか? 県境ですか? それとも仲間ですか? 家族ですか? 自分以外はすべてフェンスの外かもしれない… 

 

明日から平日ですね。仕事に戻らなければいけない。普通にみんなが生活できる日が待ち遠しい。そんな日を待っています。素晴らしい明日が来ることを心から祈ります。