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避暑地とそばとビール

旧制松本高校校舎
旧制松本高校校舎

10月なのにまだまだ暑いですねー。こんな日曜日は避暑地でゆるりと過ごしたいものです。北杜夫は売れっ子作家になってから、長野県軽井沢に別荘を買い、夏には近所の遠藤周作と交流したといいます。

 

北家の別荘の玄関に「猛犬注意」ならぬ「猛人注意」と、遠藤にいたずら書きをされたとか。超有名作家間のドタバタ劇も羨ましい限りです。実は、北杜夫と言う作家が、僕の大学選択にかなり影響を与えてきました。

 

『どくとるマンボウ青春記』には、彼が旧制松本高校時代に経験したユニークな挿話が多く、旧制高校(新制では大学)とは何て楽しそうな所なんだと、まだ純粋な気持ちを保っていた中学生の僕は胸を膨らませました。

 

北杜夫の旧制高校の描写は、僕のイメージでは歴史ある重厚な国立大学に連なります。高校に上がってしばらくすると旧帝大に受かるほど自分の実力がないことに気づき、地元にある普通の国立大学を何とか受験しました。

 

2次試験当日の国語の長文に、いきなり北杜夫の『楡家の人びと』が出典されたのを今でも覚えています。北杜夫ファンとは言え、どちらかと言えば彼のユーモアが好きなだけで、残念ながらあの分厚い本格小説を読む気力はなかった。泣

 

読んだことのあるのは『船乗りクプクプの冒険』や『怪盗ジバコ』みたいな軽いノリのものばかり。ほとんどの受験生も『楡家の人びと』など読んでないと思うんですが、読まなかった後悔の念から抜け出せなくなって答案用紙の前で思考停止状態に。汗

 

そんな頃から成長せぬまま、もう40年。まさに光陰矢の如し。コロナ渦前一昨年の今ごろ、秋休みを取って松本、安曇野、上高地を初めて訪れました。旧制松本高校跡は、北の著述通り当時の風情が残る名所で、松本市は歴史を感じるとても素晴らしい街でした。

 

長野県一帯は蕎麦の産地で有名ですが、松本の蕎麦屋は他県に比べて、かなり安くて大盛。つまみに出汁巻きと天ぷらを食べただけで、すでに腹一杯です。〆に出てきた主役の蕎麦1枚が超大盛。めちゃ美味いんですけどねー。

 

蕎麦を口に詰め込みながら、高校時代に食糧難でひもじい思いをしたという北の描写を思い出しました。戦時中にネギだけを食べ続け涙した話や、雑草から雨ガエルまでを食した話…。蕎麦を残しては、今は亡き北杜夫に申し訳ないと何とか完食しました。

 

軽井沢に別荘を買うほどの甲斐性は僕にはありませんが、リタイア後に第二の故郷である香川県の女木島あたりに古民家を買うことが今の夢です。夏休みに海岸でビールを飲みながら、対岸にある高松市街をのんびりと眺めたい。〆は蕎麦じゃなくてやはりうどんですかねw

 

ま、定年後なので毎日休みなんだから、1年中ボーと過ごしても良いわけです。ただ脳みその半分はすでに溶けてるようなので、あっという間に痴呆症になってしまうのは必然。やっぱり夏限定のバカンスとかにしないと駄目だな、きっと。笑