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いまさらながら『バカの壁』

2021年も終わりに近づいてきましたね。今年は2月にロードバイクから落車し、鎖骨を骨折、チタンプレートで接合する手術から肺炎を併発しました。1カ月もの間、新型コロナのせいで一人きり入院生活を送るのは苦痛そのものでした。

 

退院後も半年以上に渡り、毎週のリハビリ通院を繰り返し、最近やっと腕の可動域が元に戻りました。その間にオリンピックやパラリンピック、大谷翔平の大活躍など、「身体」に関わりの深い1年だったような気がします。

 

普段は忘れていても、怪我や病気をすると「生きる」ということを強く意識しますよね。入院している時、ベストセラーになった『バカの壁』で養老孟司さんが意識と身体について洞察されていたのを思い出しました。

 

詳しい内容は覚えていないのですが(笑)、養老さんは解剖学者だけあって、脳の機能から「認知バイアス」のことを詳しく書かれていたような気がします。確認したくても古本屋に売ってしまったのでスミマセン。

 

「バカの壁」とは、知りたくないことに関する情報を遮断(壁)してしまう人間の認知経路のことを言っている訳です。人間は都合の悪いことには耳を塞ぎ、都合のいいことしか覚えていないものですから。

 

それを加速しているのがSNSの存在です。スマホの「フィルターバブル」に閉じこもって、似通った思考の友達の輪の中でしか情報を共有できない。そして、新型コロナワクチンが接種20年後に猛毒化すると狂信する人々が生まれるのです。

 

コロナ禍の入院とは、病院というリアルなフィルターバブルの中で、強制的に生活させられることです。情報は医者を中心とする看護師のチームにより制御され、病院の内部で起こっていることは外部に開示されることは無い。

 

ここ(病院)に「バカの壁」があると、一人きりの患者から都合の悪い話があっても抹殺され、都合のいい治療が捏造される訳です。この視点で、見舞いや看病に訪れる人が、外部から病院に出入りできるのはとても重要なことだと思います。

 

医者が「バカ」なはずはないと言う方が居るかもしれませんが、これは難しい国家試験を通ったからといって無くなるような壁ではなく、人間なら誰でも持っている壁なのです。そして、あらゆる組織も然り。

 

いくら偉い人が経営層に居ようとも、企業がこの壁に気づかないと第2の東芝を生むことになる。いくら賢い人が教授や理事に居ても、学校がこの壁を壊さないと第2の日本大学を生むことになる。

 

組織は国家にもつながります。中国やロシアとアメリカの関係を見ていてもお判りでしょう。この壁を超えることは困難極まりない。日本でも「バカの壁」がドンドン増えて、寛容さのない自分勝手な意見が急増していませんか?

 

来年は特に謙虚に過ごしたいと思っているのです。神谷美恵子さんの言葉で今年を締めくくりたいと思います。――私たちは人間の小さなあたまで、ただ有用性の観点からのみ人間の存在意義を測ってはならないと思う――

 

来年が素敵な年になりますように。皆さま、良いお年をお迎えください。