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運が良いとか悪いとか(その2)

羽生結弦選手の演技、素晴らしかったです。4回転半へのチャレンジ、そしてその結果の4位。メディアでもSNSでも様々な意見や感想が聞かれます。「努力は報われないんだな」という彼の言葉が、昨夜ずっと私の心に響いていました。

 

私の大嫌いな哲学者である中島義道さんの著作『カイン』に「美しい敗者」という言葉が出てきます。――敗者の最後の砦は美しいことだ。美しい成功者はありえないのだから――ここでいう成功者は社会に順応してしまった醜い中年男を前提にしていますけど。笑

 

昨日の羽生選手を見て「美しい敗者」という言葉を思い出したのです。――強く知的で美しい中年女性はそれなりに魅力的なものだ。また、いかなる美少女でも恐ろしく現実的であって、例えば(中略)カムパネルラのような宇宙論的な透明な悲しみがない――

 

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場するカムパネルラに青年の美しさを中島は例えるのです。根本的な悩みを抱えている青年の美しさを表現した素晴らしいテクストだと思います。(中島さんは嫌いだけど。)女性は確かに美しいが青年期の悩める男性の美しさはそれを超える。

 

こんなことを書いているとまるで私が同性愛者のようですが、それは残念ながら?違います。我々が知りえないような努力を積み重ね、信じられないような重圧の中で五輪の舞台に立ち、運に見放されても前を向き懸命に演技する羽生選手の姿に心打たれぬものはいないことでしょう。

 

コロナ禍でずっと重たいものを世界が抱え続けている中で、昨日また大きな感動をいただきました。東京五輪の時もそうでしたが、北京五輪でもコロナウィルスを吹き飛ばすような元気を与えてくれるすべてのアスリートとパラアスリートに感謝です。

 

今日のスノーボード男子ハーフパイプ決勝、楽しみですね。平野歩夢選手に期待です!