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101匹のうさぎちゃん

広島県竹原市の対岸にウサギの島があるのをご存知でしょうか? 正しくは「大久野島」と言うのですが、とても多くのウサギが生息しているため「ウサギの島」と呼ばれています。

 

野生のウサギが1,000匹以上いると言われますが、このコロナ禍で400匹程度まで激減したという報道がありました。さらに観光客からもらう餌が無くなっていくと101匹まで減ってしまうかもしれません。

 

ウサギは1匹、2匹と数えるのではなく、1羽、2羽と数えると教わった方もいらっしゃるでしょう。最近は「匹」の方が一般的みたいです。太ったやつなら1頭、2頭、バニーガールなら1人、2人かもしれませんけど。笑

 

フェリーで大久野島に到着すると、ウサギがぴょんぴょんと近寄ってきます。初めてこの島に上陸した方は、ウサギ達のひとなつこさに驚くと思います。あっと言う間に取り囲まれてしまうほどです。

 

野生のウサギでも、可愛らしいのと不細工なのがいます。可愛らしい方のウサギに餌をやりたいと思うのが人情でしょう。さまざまな愛玩動物がここまで繁栄したのも可愛らしい姿に進化したお陰なのですから。

 

ところが不細工なウサギに限って懐いてくるのです。可愛らしいやつは何もせずとも餌をもらえる。でもそうでもないやつは積極的に人間に擦り寄って愛想を振りまかないといけない。私の膝から離れなかった茶色いウサギもかなり不細工でした。

 

さてお盆です。もうすぐ終戦記念日ですね。日本にとっては先の大戦を「最後の戦争」としたいものです。実は大久野島には別名があり、「毒ガス島」とも呼ばれていました。昭和初期から毒ガスの製造工場があった島なのです。

 

ここで作られた毒ガス兵器は、日中戦争で実際に使用された記録が米国立公文書館に残っています。戦時中、大久野島は公式な地図から抹消され、秘密裏に化学兵器の製造を行なっていました。

 

島内にある「毒ガス資料館」に残る多くの展示物をウサギと戯れた後に是非ご覧いただきたいと思います。8月は「原爆の日」をはじめ、国内の被害がフォーカスされがちですが、日本軍がいかに非人道的だったかを忘れてはいけません。

 

毒ガスの製造工場では青酸の薬害で多くの犠牲者が出たとの記録があります。そして、あの可愛らしいウサギたちは当時、青酸の毒性実験のために島で飼育されていたものと同じアナウサギの仲間なのです。

 

私の膝にまとわりついたウサギは元気にしているでしょうか?  秋頃に島を再訪し、不細工で太った茶色いウサギを「1頭」を見つけたいと思います。ウサギ達が擦り寄る観光客が減らないことを祈るばかりです。