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兎(うさぎ)の眼 〜112回〜

あけましておめでとうございます。2023年が始まりました。実はわたくしこの4月で60歳になります。いわゆる還暦、生まれたときと同じ暦に還る=「赤ちゃんに還る」ということです。

 

なので、誕生日が来たら会社で「ばぶばぶ」言いまくってやろうか笑 と考えています。そんなこともあってか、正月、畳に寝っ転がっていると何故か幼い頃のことを思い出しました。

 

春の暖かな日、一緒に遊んでいた近所の仲間たち(お兄ちゃんやお姉ちゃん)が幼稚園に行ってしまった後、僕はひとりぽっちで誰もいない公園をブラブラしていました。

 

幼稚園に上がる前のことですから記憶も定かではないのですが、楽しく愉快な気持ちでした。みんな幼稚園や小学校で規則に縛られて教育を受けているのに、僕はなんて自由なんだ!と。

 

もちろん規則とか教育のような難しい概念を理解している訳ではありません。決められた「ルール」から自分だけ離れて好きなことができるという幸せを感じていたのだと思います。

 

灰谷健次郎の『兎(うさぎ)の眼』をご存知でしょうか? ゴミ焼却場のある町の小学校を舞台に、22歳の新任女性教師が、個性豊かな小学生と共に成長する姿を描いた1974年の名作です。

 

「ルール」がテーマになっている作品だと僕は感じます。「自分のためのルール」ではなく、「みんなのためのルール」を真剣に模索する教師と子供、そして焼却場の住民たち。

 

教師経験を持つ灰谷によって、鮮やかに描写されるシーンは胸を打つものがあります。僕の通っていた小学校も『兎の眼』の舞台と似たような問題を抱えていたと思うのです。基町原爆スラムのこと、朝鮮とのこと、障害者のこと…。

 

「ルール」が嫌いでブラブラするのが好きだった僕も、その後ちゃんと幼稚園に通いました。小学校には『兎の眼』の小谷先生みたいに若くて美人の先生は全然いなかったけど、何とか卒業しました。

 

今日で正月休みも終わりです。明日からまた「ルール」にしたがって仕事に戻らなければいけない。幼い頃の僕のようにブラブラしている場合ではありません。まだまだローンを返さないといけないのです。汗

 

借金を全て返済したら毎日タラタラして過ごすんだろうなぁ。本当はきっすいの怠け者体質なので。ブログの最後に作中でヤクザ教師と呼ばれた足立先生の一言を掲げて終わりにします。足立、めちゃカッコいい男です。

 

――ちえおくれの人たちのことを障害者とわれわれは呼ぶが、心に悩みをもっているのが人間であるとすれば、われわれとてまた同じ障害者です。(中略)小谷先生には問題児も、ちえおくれも、学校の教師もなにもない、みんな悩める人間だったんだ――