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汚染水とシン・宇宙猿人ゴリ 〜133回〜

@ピープロ・フジテレビ
@ピープロ・フジテレビ

野村哲郎農水相の「汚染水」発言が、大きな波紋を呼びましたね。東京電力福島第一原発からの放出水について、国側の発表は大半の放射性物質を取り除いた「処理水」であり、全く問題なしとの見解です。

 

今回のことを受けて僕が思い出したのは、特撮ヒーローの『スペクトルマン』。1971年(昭和46年)にフジ系で放送された人気TV番組で、日テレ系で同時放送中の『巨人の星』の視聴率を超えた回もあったとのこと。

 

高度経済成長期に公害が問題視されていた社会背景で、地球侵略を狙う天才科学者ゴリが公害物質を利用して怪獣を作り出すという独特のストーリー。番組開始時は『宇宙猿人ゴリ』と悪役にフォーカスしたタイトルでスタートしています。

 

美しい地球を自ら汚した人類の自業自得とも捉えられる構図で、スポンサー筋から公害を題材とする内容について反感を買ったと言われ(※諸説アリ)、怪獣と戦う組織も「公害Gメン」から「怪獣Gメン」に途中変更しています。

 

水俣病やイタイイタイ病など、工場廃液が原因の「公害病」が問題視された当時、子ども向けのヒーロー番組にあって社会的問題発信の意義は大きかったのではないでしょうか。少なくとも今回の汚染水発言で、僕はこのTV番組を思い浮かべた訳ですから。

 

廃液を海に排水することに罪悪感がなかった時代、それが社会問題となって世論が変わり規制が加わり法律も変わっていく。企業が廃液を垂れ流すなんぞ、今ではありえない感覚ですが、当時は違っていたのです。

 

問題が露呈しないと社会は変わらない。人類はどう考えても未熟で幼稚です。原爆を投下してその悲惨さに驚愕し初めて非核を考える。公害病が蔓延して初めて大気汚染や工場廃液の規制を始める。

 

これまでも「宇宙猿人ゴリ」は、さまざまに形を変えて人類を襲ってきました。原爆や公害、そして人権侵害もそうです。いじめがあったとしても、当事者の自殺がないと教育現場も「気付かぬふり」をして動き出さない。

 

「気付かぬふり」が一番問題なのです。公害Gメンが怪獣Gメンに名前を変えたのも「気付かぬふり」の一つのような気がします。今回のジャニーズ事務所の性加害事件もメディアの「気付かぬふり」が問題視されています。

 

「気付かない」のは、未熟であり仕方ないことかもしれない。人類がそれほど利口でないのは歴史が証明しています。でも「気付かぬふり」は違います。ジャニーズ事務所とそれを取り巻くメディアが、シン・宇宙猿人ゴリを追放することはできるのでしょうか?