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会社を辞めることにしました! 〜144回〜

三木清は、日本を代表する哲学者の1人だと思います。新潮文庫に『人性論ノート』という三木の有名な著書があります。まだ純粋な高校生の頃、手にとった初めての哲学書でした。(高校生ですから文庫本くらいしか買えませんw)

 

『人性論ノート』の中に、今もはっきりと覚えていて、その後の僕の生きる指針になった言葉があります。この度、人生の節目を迎えるにあたり、何気に思い出して本棚から引っ張り出して確認してみました。次の一節です。

 

ーーほんとに自信のある者は静かで、しかも威厳を具えている。それは完成した性格のことである。ーー

 

「怒りについて」の章のなかの一文です。若い頃、寛容さに欠けていた僕は、怒ると手がつけられないと親にも言われていました。幼い頃から泣き出すと、どんなになだめすかしても機嫌が直らない「困ったちゃん」だったのです。

 

それは自分でも強く自覚していて、学校で友人と喧嘩になると大体トンデモない結末となる。『人性論ノート』の「怒りについて」の章が気になって、この本を買ったとも言えます。最初にこの章を読んだだけで、かなりのショックを受けました。

 

三木に、自分を見透かされたような気がしたのです。「怒る=自信がない」と明確に記されている。この一節のすぐ前に、「ひとは軽蔑されたと感じるとき最もよく怒る。だから自信のあるものはあまり怒らない」と断じられていました。汗

 

では「自信」とは何か? 三木は続けます。ーー自信は如何にして生ずるのであるか。自分で物を作ることによって。(中略)人間は物を作ることによって自己を作り、かくて個性になるーー

 

それから、僕は「物」を探し続けました。物を作ることが自信を生み、自分の個性を創ると信じて。絵を描いたり、詩や小説を書いたり、曲を作ったり、高校の授業もそっちのけでいろんな物を作り続けた…。

 

大学に入ってからも講義に出席せず、なんやかやと創作を続けました。当時自費出版した雑誌がブレイクし、テレビや新聞に取り上げられたこともあります。国立大学を批判した内容がマスコミには話題にしやすかったのでしょう。※参照https://www.bk-web.jp/post.php?id=918 

 

そして気がついたのです。「物」でなく「もの」なんだと。形あるものが「物」であれば、無形の「もの」もある。例えばビジネスモデル、プログラムや社会システム、組織の仕組みや規範ルールまで、これまでこの世に存在しなかった「もの」は全てそうなんだと。

 

今年いっぱいで今の会社を辞めることにしました。いったん卒業して、新しい「もの」づくりに取り掛かります。詳しいことは、新年を迎えてから、またお伝えしたいと考えています。僕の『人性論ノート』に新しい一章が加わることになる。

 

三木が人生において重要とするものは以下の2つです。①習慣的な行為・思考から脱却すること。②到達点でなく過程を大切にすること。ーー人間がどこから来てどこへ行くのか、誰にも分からない、「人生は未知のものへの漂泊」だと彼は言います。

 

皆さん、良い年をお迎えください。今年も僕のつまらぬブログにお付き合いいただき感謝申し上げます。来年も「習慣的な行為・思考から脱却する〈未知のものへの漂泊〉の旅」を続けてまいりましょう!