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星野之宣と宇宙と女 〜154回〜

(c)星野之宣 メディアファクトリー
(c)星野之宣 メディアファクトリー

星野之宣の絵が好きです。絵というか星野の描く女性に憧れる。例えば短編『残像』(週刊ヤングジャンプ1980年17号集英社)の鏡子。ネタバレするので詳しくは書きませんがこんな話です。

 

死亡した月面基地の女性研究員:日下鏡子の遺品に何故か「太古の地球」の写真が含まれていて、元夫の宇宙調査員が月に降り立ち、その謎を解き明かすというSFストーリー。

 

幼いころ買ってもらったトウシューズを大切にし、子供が生まれたら見せたいと願う鏡子。3年の契約結婚をしていた主人公である夫は、子供なんて全く意に介さなかったが、その強い想いに20年後改めて気付かされる。

 

自分勝手な男と一途に思い続ける女、昭和を彷彿とさせる古い女性観と批判されれば閉口するしかないのですが、それだけではない深さがある。「月になってしまいたい。あなたの月になって、いつまでもそばをぐるぐる回っていたい」

 

高校生の純粋な頃に読んだこの作品に、僕は理想の女性を見たような気がします。「女が待つ」という松山千春の歌詞のようではなく、星野之宣の繊細な線で描かれる鏡子の表情や仕草に女性の優しさや柔らかさを感じたのでしょう。

 

私の愛する妻も、なんとなく鏡子とイメージが重なります。本当に短い漫画なのに、振り返ってみると僕の人生に大きな影響を与えた作品かもしれません。そんないい感じのことを書いてますが実は…

 

『雷鳴』(モーニング2014年7号講談社)に出てくる女性戦闘員:バレットの恐竜を攻撃する時の刺すような視線で、妻に見られることもあります。優しさだけが女性の魅力ではありません。

『雷鳴』の戦闘員バレット(C)星野之宣・講談社
『雷鳴』の戦闘員バレット(C)星野之宣・講談社

生物としての厳しさは男女ともに生きる上で必要不可欠なもの。ただバレットみたく、いつも目を光らせている戦闘員のような気迫は、家の中では万が一の時だけにしていただきたいものです。笑